Month: 3月 2018

早期非小細胞肺がんの治療選択:米国の高齢者:Clincal Lung Cancer. 2018

2004年から2012年に治療された米国の1期非小細胞肺がんの患者では、年齢とともに手術が急激に減少した。 60〜64歳の患者の外科手術率は81%であったのに対し、90歳以上の患者では21%であった。外科手術も放射線療法も受けていない割合は同年齢層で、7%から40%となり、放射線11%から39%であった。また最近になるほど放射線の使用が増加している。 高齢者ほど、放射線療法(図薄青)が手術(灰色)に取って代わっている。

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子宮頸癌患者の根治手術に比べ化学放射線療法は無病生存率で優れていた:JCO 2018年

ステージIB2、IIA、IIB扁平上皮子宮頸癌患者の術前化学療法併用根治手術と化学療法併用放射線療法:無作為化比較試験

局所進行性扁平上皮性子宮頸がん患者の有効性と毒性を、標準的な化学放射線療法と、術前化学療法+根治手術との比較を行った、単一施設の第III相無作為化比較試験。
対象となる患者は18〜65歳でIB2、IIAまたはIIB期の扁平上皮癌であった。くじ引きで病期ごとに2群にわけ、1群は術前補助化学療法後、根治的子宮摘出手術行い、他方は標準化学放射線療法を行った。
2003年9月から2015年2月までに635例の患者が無作為に割り当てられ、633人(術前化学療法+外科手術群で316人、併用化学放射線療法群で317人)、術前化学療法+外科手術群における5年無病生存率(DFS)は、併用化学放射線療法群(危険率1.38,95%CI、1.02〜1.87、P = 0.038)の76.7%と比較して69.3%であったが、対応する5年全生存率はそれぞれ75.4%と74.7%であった(ハザード比1.025; 95%CI 0.752〜1.398; P = .87)。術前化学療法+外科手術群と化学放射線療法群の治療完了後24か月後の遅延毒性は直腸(それぞれ2.2%v3.5%)、膀胱(それぞれ1.6%v3.5%)、および膣(12.0% v 25.6%)。
結論として化学放射線療法は根治手術と比較して優れたDFSであった。

無病生存率A,と全生存率B 黄色:化学放射線治療、青手術

解説:
2つの治療法の優劣を比較することは結構難しく、なかなか結論が出ません。特に手術は一般に比較的若くて体力もある方が良い対象であるのに対して。放射線治療の場合には高齢者や他の病気を併発しているなど条件の悪い方にもできるということから実際に治療した患者さんで比較すると放射線治療のほうが成績が悪いことが多くなります。同じ条件下での治療法の優劣を正確に比較するには、無作為化比較試験(くじ引き試験)というものをやります。これは患者さんの同意を得て2つの治療法をくじ引きででた治療法の方を行い、その結果の比較すると言うものです。科学的には強力で正しい方法ですが、想像されるように、がんなどの場合にはなかなかできないこともあります。特に日本ではなかなか難しく、子宮頸がんに対する日本での手術と放射線治療の比較はありませんが、欧米では以前より行われておりステージ2までの成績は同等とされています。実際欧米ではこの時期の子宮頸がんは放射線治療また抗がん剤(化学療法)を併用した放射線治療が極めて多いです。一方日本では手術の方がはるかに多いです。その理由として日本の婦人科医は手術が上手だからという人もいますが、それは本人以外(本人も?)わかりません。このような比較試験をしないといつまでも判明しないですが、海外の結果と日本とが大きく違うと考えることはないと思います。
実際、日本のある病院で患者さんに両方の治療を説明して手術と放射線治療を選んでもらった結果を比較した研究があります。これは以上のような理由から科学的には根拠の強いものではありませんが、2つの治療の成績は全く同じか、やや放射線治療が良いかもしれないというものでした。ちゃんとした治療を行えば、おそらく変わらないのが真実でしょう。

無病生存率(DFS)というのは、再発、転院していない、すなわち病気がない状態の割合です。解釈としては手術は放射線に比べて再発などはあるが、そのあとで放射線などの次の治療を行えば生存率自体はあまり変わらないということだと思います。再発しても次の治療があると考えるか、はじめから再発しないほうが良いのかという点では、治療後の副作用、QOL(生活の質)から判断すべきでしょう。再発してから治療することは一般に副作用も多く心理的にも負担です。

(ハザード比1.025; 95%CI 0.752〜1.398; P = .87)などという言葉や数値についてはここでは説明しませんが、とりあえず無視しても良いと思います。
なお、この中でもIIBという病期では、日本では手術もされますが、欧米では化学放射線の方が良い、ということになっています。その理由は、手術をしても再発が多く放射線治療などの後治療が必要になり、結果として副作用が相乗的に増えるなどのことからです。この研究でもIIB期での差が大きいようです。もちろん全て放射線治療すべきとはいえませんがI,II期でも考えるべき治療法で、特にIIB期では日本でも放射線治療優先に考えて良いでしょう。

PubMed:Neoadjuvant Chemotherapy Followed by Radical Surgery Versus Concomitant Chemotherapy and Radiotherapy in Patients With Stage IB2, IIA, or IIB Squamous Cervical Cancer: A Randomized Controlled Trial.

手術可能なI期非小細胞肺がんでの手術と定位放射線治療の成績比較

手術可能なI期非小細胞肺癌の定位切除的放射線療法と肺葉切除術:2つのランダム化試験のプール分析 Lancet Oncology 2015

手術可能なI期非小細胞肺癌(NSCLC)の標準治療は、縦隔リンパ節郭清と肺葉切除である。定位放射線治療: Stereotacticablative radiotherapy (SABR) と手術を比較する、2つの無作為化第3相試験は、対象患者が集まらないため早期に終了になった。これらの試験からのデータをプールすることにより、手術とSABRの全生存期間を評価した。
対象となる患者は、臨床病期T1-2a(4cm未満)、N0M0、手術可能で、定位放射線治療と肺葉切除術に対して1:1の比率でランダムに割り当てられた。

結果として、58名の患者が無作為に割り当てられた(31名はSABR、27名は手術)。3年生存率は、SABR群では95%、手術群は79%(64-97)。3年無再発生存率は、SABR群で86%、手術群で80%。手術群では、1例領域リンパ節再発、2例遠隔転移。 SABR群では1例局所再発、4例領域リンパ節再発、1例は遠隔転移であった。 SABR群の3人(10%)の患者に、グレード3の有害事象(胸壁痛10%3例、呼吸困難咳6%2例、疲労および肋骨骨折1例3例)があった。グレード4の事象または治療関連の死亡はなかった。外科手術群では、1人(4%)の患者が外科的合併症で死亡し、12人(44%)の患者がグレード3〜4の治療関連有害事象を有していた。手術群グレード3の事象は、呼吸困難(4人の患者15%)、胸部の痛み(患者4人の15%)、肺の感染症(2人の7%)。
SABRは、手術可能なI期NSCLCの選択肢であり得る。患者のサンプルサイズが小さく、追跡期間が短いので、手術可能な患者におけるSABRと手術とを比較した追加の無作為試験が望まれる。

PubMed:Neoadjuvant Chemotherapy Followed by Radical Surgery Versus Concomitant Chemotherapy and Radiotherapy in Patients With Stage IB2, IIA, or IIB Squamous Cervical Cancer: A Randomized Controlled Trial.

解説:

早期肺がんに対して手術と定位放射線治療のどちらの優れているかを比較する研究は、現在、3つの例外を除いて全て後ろ向き研究です。後ろ向き研究というのはすでに行われた治療のカルテなどを調べて再発率などを比較するもので、選択バイアス(比較する群間で、治療法以外のその他の要素が偏っているための誤差)が正確な結果が得られません。治療法自体がどちらが優れているか(あるいは同等か)を評価するには、ランダム化が必要ですが、このように大きく違う治療法の間ではなかなか難しいです。患者さんにとってみれば自分の治療が手術か放射線治療かくじで決められる、というのはちょっと納得がいかないですよね。だからこれらの研究は参加してくれる患者さんが集まらず途中で中止になっています。そこで、この2つの研究を合わせて解析してみたところ放射線治療の方が良いのではないか、という結果が出ました。
ただ、この研究にはいくつかの批判もあります。まず、症例数が少ないことです。解析する数が少ないとどうしても精度の低い結果になりがちです。また、手術を行った患者さんで、死亡が多いですがこれは比較的手術が難しい方だったのではないかと思っています。すなわち手術可能とは判断されたけれど、ギリギリだったのでは、との疑いがあります。しかし実際にはそのような患者さんは多いので、ある程度の手術リスクがあるような人は無理して手術するより放射線治療のほうがよいのかもしれません。

また、話が飛びますが、最近免疫チェックポイント阻害剤と放射線治療と相性が良いということが言われています。放射線治療を行うことでがんから抗原が露出し、免疫機能が賦活化されのかもしれません。早期肺がんに対しても、転移などを予防するために免疫チェックポイント阻害剤を早期から投与するという選択肢も今後はあるかもしれません。ただ、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤は現在のところ大変高額で、保健医療が破綻するのではないか、とマスコミなども賑わせています。これも大きな問題なので、もう少し安く供給できるようになると良いですね。