子宮頸癌患者の根治手術に比べ化学放射線療法は無病生存率で優れていた:JCO 2018年

ステージIB2、IIA、IIB扁平上皮子宮頸癌患者の術前化学療法併用根治手術と化学療法併用放射線療法:無作為化比較試験

局所進行性扁平上皮性子宮頸がん患者の有効性と毒性を、標準的な化学放射線療法と、術前化学療法+根治手術との比較を行った、単一施設の第III相無作為化比較試験。
対象となる患者は18〜65歳でIB2、IIAまたはIIB期の扁平上皮癌であった。くじ引きで病期ごとに2群にわけ、1群は術前補助化学療法後、根治的子宮摘出手術行い、他方は標準化学放射線療法を行った。
2003年9月から2015年2月までに635例の患者が無作為に割り当てられ、633人(術前化学療法+外科手術群で316人、併用化学放射線療法群で317人)、術前化学療法+外科手術群における5年無病生存率(DFS)は、併用化学放射線療法群(危険率1.38,95%CI、1.02〜1.87、P = 0.038)の76.7%と比較して69.3%であったが、対応する5年全生存率はそれぞれ75.4%と74.7%であった(ハザード比1.025; 95%CI 0.752〜1.398; P = .87)。術前化学療法+外科手術群と化学放射線療法群の治療完了後24か月後の遅延毒性は直腸(それぞれ2.2%v3.5%)、膀胱(それぞれ1.6%v3.5%)、および膣(12.0% v 25.6%)。
結論として化学放射線療法は根治手術と比較して優れたDFSであった。

無病生存率A,と全生存率B 黄色:化学放射線治療、青手術

解説:
2つの治療法の優劣を比較することは結構難しく、なかなか結論が出ません。特に手術は一般に比較的若くて体力もある方が良い対象であるのに対して。放射線治療の場合には高齢者や他の病気を併発しているなど条件の悪い方にもできるということから実際に治療した患者さんで比較すると放射線治療のほうが成績が悪いことが多くなります。同じ条件下での治療法の優劣を正確に比較するには、無作為化比較試験(くじ引き試験)というものをやります。これは患者さんの同意を得て2つの治療法をくじ引きででた治療法の方を行い、その結果の比較すると言うものです。科学的には強力で正しい方法ですが、想像されるように、がんなどの場合にはなかなかできないこともあります。特に日本ではなかなか難しく、子宮頸がんに対する日本での手術と放射線治療の比較はありませんが、欧米では以前より行われておりステージ2までの成績は同等とされています。実際欧米ではこの時期の子宮頸がんは放射線治療また抗がん剤(化学療法)を併用した放射線治療が極めて多いです。一方日本では手術の方がはるかに多いです。その理由として日本の婦人科医は手術が上手だからという人もいますが、それは本人以外(本人も?)わかりません。このような比較試験をしないといつまでも判明しないですが、海外の結果と日本とが大きく違うと考えることはないと思います。
実際、日本のある病院で患者さんに両方の治療を説明して手術と放射線治療を選んでもらった結果を比較した研究があります。これは以上のような理由から科学的には根拠の強いものではありませんが、2つの治療の成績は全く同じか、やや放射線治療が良いかもしれないというものでした。ちゃんとした治療を行えば、おそらく変わらないのが真実でしょう。

無病生存率(DFS)というのは、再発、転院していない、すなわち病気がない状態の割合です。解釈としては手術は放射線に比べて再発などはあるが、そのあとで放射線などの次の治療を行えば生存率自体はあまり変わらないということだと思います。再発しても次の治療があると考えるか、はじめから再発しないほうが良いのかという点では、治療後の副作用、QOL(生活の質)から判断すべきでしょう。再発してから治療することは一般に副作用も多く心理的にも負担です。

(ハザード比1.025; 95%CI 0.752〜1.398; P = .87)などという言葉や数値についてはここでは説明しませんが、とりあえず無視しても良いと思います。
なお、この中でもIIBという病期では、日本では手術もされますが、欧米では化学放射線の方が良い、ということになっています。その理由は、手術をしても再発が多く放射線治療などの後治療が必要になり、結果として副作用が相乗的に増えるなどのことからです。この研究でもIIB期での差が大きいようです。もちろん全て放射線治療すべきとはいえませんがI,II期でも考えるべき治療法で、特にIIB期では日本でも放射線治療優先に考えて良いでしょう。

PubMed:Neoadjuvant Chemotherapy Followed by Radical Surgery Versus Concomitant Chemotherapy and Radiotherapy in Patients With Stage IB2, IIA, or IIB Squamous Cervical Cancer: A Randomized Controlled Trial.

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