大腸がんについて
大腸癌は我が国においても増加しており、身近ながんと言えるでしょう。大腸癌は早期の場合には内視鏡で切除できますが、ある程度進行した場合には外科療法すなわち手術が必要となります。抗癌剤などの化学療法や放射線療法は補助的に行われます。
大腸は主に結腸と直腸に大別され、肛門に近い12㎝程度の部分を直腸と言います。大腸癌のうち結腸癌に対しては、放射線治療はあまり用いられません。直腸癌に対しては肛門に近い下部進行直腸癌の場合には、手術前に抗癌剤と放射線治療を併用して行う術前化学放射線療法が、国際的には標準治療となっています。下部進行直腸癌では根治手術により人工肛門を余儀なくされる可能性もありますが、この術前化学放射線療法により肛門を残せる可能性が高くなる患者さんもいます。また、直腸癌では結腸癌に比べて局所再発を生じやすいのですが、局所再発を来すとその後の治療はより難しいものとなります。術前化学放射線療法を行うと、この局所再発を5%以下に減らすことがわかっています。我が国では、この術前化学放射線療法を行っていない施設も多いのですが、徐々に行う施設が増加しています。当院では早くから積極的に術前化学放射線療法を取り入れ、良好な治療成績を背景にこの治療を推進しています。
また、標準治療ではありませんし、一部の方のみが適応になりますが、術前化学放射線療法後に腫瘍の完全消失が得られた場合は、手術をしないで定期的に再発の有無を確認して様子を見る待機療法もあり得ます。
その他に大腸癌に対する放射線治療の役割としては、局所再発や骨、肺、肝などへの遠隔転移に対して、局所制御や症状緩和を目的に行うことがあります。少数の肝、肺転移に対してはピンポイント治療である体幹部定位放射線治療(SBRT)も有用です。当院では単発の骨転移に対しても臨床試験の範囲で体幹部定位放射線治療を行っています。