直腸がん化学放射線治療後の待機療法、手術は避けられる?
以前にも書いたが再度、直腸癌の化学放射線療法の話題があった。ちょうどLancetという世界でも最高級の医学雑誌にも掲載された。化学放射線療法後に腫瘍が完全消失し待機療法(手術をしないで様子を見ること)後どうなったか、を千人以上の患者で国際的に調査した。その結果、5年時点での全生存率(他疾患も含めてた生存率)は 85%、直腸癌のみによる生存率は94%と良好で、直後に手術をした場合と変わらない。
2年間で25.2%が再発したが、ほとんどは局所再発であった。すなわち待機療法で仮に再発しても、ほとんどが救済手術が可能なことを示している。
患者本人も医師も待機療法は、病変が残っているのではないか、リンパ節などの郭清をしていないので心配、とのことはある。しかし、データを見る限りそれでも生存率は良好でリンパ節転移、遠隔転移は少ないので直腸肛門を温存できる可能性のある待機療法の意義は大きい。
一方、化学放射線療法後の完全奏功は2割程度とされており、また再発時の救済手術も必要であることから多くは外科手術が主体であることも確かである。待機療法は標準治療ではないし、可能性があるのは運の良かった人、とはなるが個別に医師と患者で相談しながら事実に基づいて患者主体の合理的な判断をしていくことが必要であろう。
また、本研究は信頼度がもっとも高いとされるくじ引き試験などでなく、通常の方法でおこなった治療を調査した観察研究といわれるものであるが、多数の国々からオンラインでデータベースに登録していったことで客観的な評価を得ている。このようなITを活用した取り組みが臨床研究にも大きく貢献できるだろう。
Posted on: 2018年12月22日, by : ETSUO KUNIEDA