前立腺癌の通常分割照射と寡分割照射の比較

前立腺がんの放射線治療(外部照射)は効果も高く.通院で治療可能、かつ副作用も少ないため多くの人に行われていますが、欠点は全体で35回から40回程度、2ヶ月近くを治療に要することです。これは遠方の患者さんには大変な重荷で、そのために治療をあきらめてしまうということもしばしばあります。仕事などにも差し支えるかもしれません。

これまで放射線治療は回数を増やして照射した方が正常組織に対する副作用が少ないと思われていました。確かに増殖の早い小細胞肺がんなどは一定期間内になるべく照射回数を多くするために1日に2回照射する方法などが行われています。しかし前立腺がんや乳がんなどは増殖も遅く、むしろ理論上では回数を減らしたほうが効果も高く正常組織への副作用も少ないと思われてきました。実際に治療した結果からも通常の回数よりも少ない回数でも治療効果は変わらないか、むしろ良いことがわかってきました。

この研究ではくじ引き試験によって、高リスク(正確な定義はここでは説明しませんがネット上にあります)の前立腺がん患者に対して通常の回数(40回:黄色)と、少ない回数(20回:青色)の治療とを比較しています。
実際には腫瘍マーカーによる再発(A)と前立腺がんによる死亡率(B)を比較しています。どちらも少ない回数のほうが一見よく見えますが、統計的な有意差はありませんので、治療成績は変わらない、という解釈になります。統計的に有意、すなわちどの程度結果が信頼できるかは通常図に表示されているP値というもので見ます。P値が0.05より小さい場合は有意差がある、すなわち信頼できるとしています。P値が0.05以上の場合には、厳密には「たまたま差があるように見える」と解釈します。ただ、さらに細かく解析すると差がある可能性もあります。実際にこの試験でも多変量解析という手法などで解析した場合には少ない回数の方がやや良いです。おそらく参加する患者さんの数がもう少し増えるとグラフの有意差も明らかになるでしょう。なお、副作用についてはにどちらもほぼ同等です。

最近ではさらに少なく5回程度で前立腺定位放射線治療が行われる場合もあります。前立腺がんの結果は10年近く見る必要があるので、こちらのほうはまだ長期的な結果は出ておりませんが現在のところは悪くないと思われます。東海大学でも施行しています。

原文:Moderate Hypofractionation in High-Risk, Organ-Confined Prostate Cancer: Final Results of a Phase III Randomized Trial J Clin Oncol. 2017 Jun 10;35(17):1891-1897

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