下部直腸がんで人工肛門を避ける可能性は?

lancet Oncology 2016年掲載 Watch-and-wait approach versus surgical resection after chemoradiotherapy for patients with rectal cancer (the OnCoRe project): a propensity-score matched cohort analysis より
直腸がん術前に化学放射線治療を行うことは欧米では標準的治療となっているが、そのうち10-20%は完全に腫瘍が消失する。現時点ではその場合でも手術を行い、肛門に近い腫瘍の場合には人工肛門とすることが通常である。2011年~2013年にかけてマンチェスターで手術をせずに様子をみた” Watch-and-wait”患者と手術をした同数の2群の治療結果を統計的に比較した(傾向スコアマッチング法)。
その結果、3年非再発・無病生存期率、3年総生存率に有意差は認められなかった。ただし、Watch-and-wait”患者も3割程度は結果として人工肛門になっている。https://www.jastro.or.jp/journalclub/detail.php?eid=00179にも日本語要約あり。
また別の論文(Lancet 2018)ではランダム化して直腸全摘術と局所手術を比べているが(GRECCAR 2)、この場合も再発率、生存率とも有意差がなく、同じ程度の成績であったが、人工肛門率も含め副作用は少なかった。人工肛門を避けられた患者のQOL(生活の質)は相対的によく、結果的に無用な人工肛門を避けることが多少とも期待できるなら、治療選択の一つとして患者に提示されるべきであろう。
また、画像診断法の進歩により腫瘍の消失がより正確に確認できるようになりつつあることも朗報で、一部ではあっても患者にメリットのある治療として考えられる。

Posted on: 2018年5月12日, by : ETSUO KUNIEDA