ご挨拶
2019年4月付けで東海大学医学部専門診療学系放射線治療科学教授を拝命いたしました。関係各医療機関の皆様には、これまで格別のご支援とご厚情を賜りましたことを厚く御礼申し上げます。
近年、放射線治療は目覚ましく進歩しました。
1990年代より、日本国内において、乳癌に対する乳房温存療法がすこしずつ広がってきました。乳房温存療法は腫瘍を部分切除した後、温存乳房に放射線照射をすることで、局所再発率を減らすことができます。現在、乳房温存療法は日本国内に広く普及しており、標準的治療となっています。
1990年代後半より、化学放射線療法が普及してきました。手術療法と比べて、切らずに治すことができるメリットがあります。特に、頭頸部癌、食道癌、肺癌、子宮頸癌等で効果が認められました。
放射線照射技術も進歩してきました。ひとつは、定位放射線治療です。これは、腫瘍だけをピンポイントに照射する治療です。これにより、周囲正常組織の線量を抑制することが可能となり、有害事象を少なくすることができます。また、腫瘍に高線量を照射することにより、局所制御率の向上が得られています。現在、転移性脳腫瘍、孤立性早期肺癌、小型肝細胞癌、早期前立腺癌に対して、定位放射線治療が行われています。もうひとつは、強度変調放射線治療です。従来の放射線治療技術では照射野内の線量強度を変えることができませんでした。強度変調放射線治療はこれが可能となり、正常組織への照射線量を抑えて、腫瘍に高線量を照射することが可能となります。定位放射線治療では適応とならないような大きな腫瘍に対しても治療が可能となります。現在、脳腫瘍、頭頸部腫瘍、肺癌、食道癌、膵臓癌、前立腺癌等で強度変調放射線治療が行われています。
今後は、地域医療の発展のために、高度な放射線治療の提供を目指してまいります。また、患者さんが安心して治療を受けられる治療を提供するようにこころがけてまいります。
東海大学医学部付属病院 専門診療学系 放射線治療科学
教授 菅原 章友
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